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マイクロサービスアーキテクチャとは?モノリシックとの違いを解説

公開日: 2024年2月1日 著者: mogura
マイクロサービスアーキテクチャとは?モノリシックとの違いを解説

疑問

マイクロサービスアーキテクチャとは何で、従来のモノリシックアーキテクチャとどのように違うのでしょうか?それぞれのメリット・デメリットを一緒に学んでいきましょう。

導入

現代のソフトウェア開発において、システムアーキテクチャの選択は非常に重要です。マイクロサービスアーキテクチャは、大規模なアプリケーションを小さな独立したサービスに分割する設計手法で、Netflix、Amazon、Uberなどの大手企業が採用しています。

一方で、モノリシックアーキテクチャも依然として有効な選択肢です。本記事では、両者の違い、メリット・デメリット、実装時の考慮事項まで、実践的な観点から詳しく解説していきます。

マイクロサービスアーキテクチャのイメージ

解説

1. マイクロサービスアーキテクチャとは

マイクロサービスアーキテクチャは、アプリケーションを小さな独立したサービスに分割する設計手法です。各サービスは独自のデータベースを持ち、独立してデプロイ・スケールできます。大規模なシステムを構築する際に、柔軟性とスケーラビリティを提供します。

マイクロサービスの特徴

マイクロサービスには以下のような特徴があります:

  • 独立性: 各サービスは独立して開発・デプロイ可能です。1つのサービスを変更しても、他のサービスに影響を与えません。これにより、開発チームは独立して作業でき、デプロイの頻度を上げることができます。
  • 技術的多様性: サービスごとに異なる技術スタックを使用可能です。各サービスに最適な技術を選択できるため、パフォーマンスや開発効率を向上させることができます。
  • スケーラビリティ: 必要なサービスだけをスケールできます。トラフィックが集中するサービスだけをスケールアップすることで、リソースを効率的に使用できます。
  • フォールトトレランス: 1つのサービスの障害が全体に影響しません。他のサービスは正常に動作し続けるため、システム全体の可用性が向上します。

2. モノリシックアーキテクチャとは

モノリシックアーキテクチャは、すべての機能を1つのアプリケーションに統合した設計です。小規模なアプリケーションや初期段階のプロジェクトに適しており、開発とデプロイが比較的簡単です。

モノリシックの特徴

モノリシックアーキテクチャには以下のような特徴があります:

  • 単一デプロイ: アプリケーション全体を一度にデプロイします。すべての機能が1つのパッケージに含まれているため、デプロイプロセスがシンプルです。
  • 共有データベース: すべての機能が同じデータベースを使用します。データの整合性を保ちやすい一方で、スケーリングが困難になる場合があります。
  • 開発の簡素化: 初期開発が比較的簡単です。単一のコードベースで作業するため、開発環境のセットアップやデバッグが容易です。
  • デバッグの容易さ: 単一プロセスでデバッグ可能です。すべてのコードが1つのプロセスで実行されるため、問題の特定と修正が簡単です。

3. マイクロサービス vs モノリシック

マイクロサービスとモノリシックアーキテクチャには、それぞれ異なる特徴と用途があります。プロジェクトの規模、チームサイズ、要件に応じて適切なアーキテクチャを選択することが重要です。

マイクロサービスとモノリシックアーキテクチャを比較することで、それぞれの特徴と使い分けが理解できます。

比較表

開発速度、デプロイ、スケーリング、技術スタック、複雑性、テストの観点から比較すると、それぞれにメリットとデメリットがあります。モノリシックは初期開発が速く、マイクロサービスは長期的なスケーラビリティに優れています。

以下の表は、マイクロサービスとモノリシックアーキテクチャの主な違いを示しています:

どちらを選ぶべきか

モノリシックは小規模なアプリケーションや迅速なプロトタイピングに適しています。一方、マイクロサービスは大規模なアプリケーションや複数の開発チームが関わるプロジェクトに適しています。

プロジェクトの要件に応じて、適切なアーキテクチャを選択することが重要です。

アーキテクチャの比較

この比較表は、マイクロサービスとモノリシックアーキテクチャの主な違いを示しています。

項目モノリシックマイクロサービス
開発速度初期は速い初期は遅い(インフラが必要)
デプロイ単一デプロイ独立デプロイ
スケーリング全体をスケールサービス単位でスケール
技術スタック単一多様
複雑性低(小規模時)高(運用が複雑)
テスト簡単複雑(統合テスト)

4. マイクロサービスの設計原則

マイクロサービスを設計する際は、適切なサービス境界の定義とデータベース分離が重要です。ドメイン駆動設計の原則に基づいて、ビジネス機能ごとにサービスを分割します。

サービス境界の定義

サービス境界は、技術的な境界ではなく、ビジネス機能やドメインに基づいて定義する必要があります。例えば、ユーザー管理、注文処理、決済処理など、それぞれのビジネス機能ごとにサービスを分割します。これにより、各サービスが独立して開発・デプロイでき、変更の影響範囲を限定できます。

データベース分離

各マイクロサービスは独自のデータベースを持ち、他のサービスから直接アクセスできません。これにより、サービス間の結合を弱め、独立したスケーリングとデプロイが可能になります。データの共有が必要な場合は、APIを通じて行います。

サービス境界の定義例

サービス境界は、ビジネス機能に基づいて定義する必要があります。技術的な境界で分割すると、サービス間の結合が強くなり、独立した開発が困難になります。

# 良い例:ドメイン駆動設計に基づく
- User Service(ユーザー管理)
- Order Service(注文管理)
- Payment Service(決済処理)
- Inventory Service(在庫管理)
- Notification Service(通知)

# 悪い例:技術的な境界
- Database Service
- API Service
- Frontend Service

データベース分離の例

各サービスは独自のデータベースを持ち、他のサービスから直接アクセスできません。

User Service → User Database
Order Service → Order Database
Payment Service → Payment Database

5. マイクロサービス間の通信

マイクロサービス間の通信には、同期通信と非同期通信の2つのアプローチがあります。それぞれ異なる特徴と用途があり、適切に使い分けることが重要です。

マイクロサービス間の通信には、同期通信(REST API)と非同期通信(メッセージキュー)の2つのアプローチがあります。

同期通信(REST API)

同期通信は、HTTPリクエストを使用してサービス間で直接通信します。シンプルで理解しやすい一方で、サービス間の結合が強くなり、パフォーマンスの問題が発生する可能性があります。リアルタイムの応答が必要な場合に適しています。

非同期通信(メッセージキュー)

非同期通信は、メッセージキューを使用してサービス間で通信します。疎結合でスケーラブルですが、複雑性が増加し、デバッグが困難になる場合があります。イベント駆動型のアーキテクチャに適しています。

同期通信(REST API)

同期通信の例です。HTTPリクエストを使用してサービス間で直接通信します。

// Order Service が User Service を呼び出す
const userResponse = await fetch('http://user-service/api/users/123');
const user = await userResponse.json();

// メリット:シンプルで理解しやすい
// デメリット:サービス間の結合が強くなる、パフォーマンスの問題

非同期通信(メッセージキュー)

非同期通信の例です。メッセージキューを使用してサービス間で通信します。

// イベントを発行
await messageQueue.publish('order.created', {
  orderId: 123,
  userId: 456,
  amount: 10000
});

// イベントを購読
messageQueue.subscribe('order.created', async (event) => {
  await notificationService.sendEmail(event.userId, '注文が完了しました');
});

// メリット:疎結合、スケーラビリティ、フォールトトレランス
// デメリット:複雑性の増加、デバッグの難しさ

6. APIゲートウェイパターン

APIゲートウェイは、クライアントとマイクロサービス間の単一のエントリーポイントです。ルーティング、認証・認可、レート制限、ロードバランシングなどの機能を提供します。

役割

APIゲートウェイには以下のような役割があります:

  • ルーティング: リクエストを適切なサービスに転送します。URLパスやヘッダーに基づいて、どのサービスにリクエストを送信するかを決定します。
  • 認証・認可: 統一された認証処理を行います。すべてのリクエストをAPIゲートウェイで認証し、認証されたリクエストのみをバックエンドサービスに転送します。
  • レート制限: APIの使用量を制限します。クライアントごとにリクエスト数を制限し、過剰な使用を防ぎます。
  • ロードバランシング: トラフィックを分散させます。複数のサービスインスタンス間でリクエストを分散し、負荷を均等にします。
  • ロギング: リクエストの記録を行います。すべてのリクエストをログに記録し、監視と分析を可能にします。

APIゲートウェイの実装例

APIゲートウェイの例です。認証を行い、リクエストを適切なサービスに転送します。

// API Gateway の例
app.get('/api/users/:id', authenticate, async (req, res) => {
  const user = await userService.getUser(req.params.id);
  res.json(user);
});

app.post('/api/orders', authenticate, async (req, res) => {
  const order = await orderService.createOrder(req.body);
  res.json(order);
});

7. サービスディスカバリー

サービスディスカバリーは、マイクロサービスが互いを見つけるための仕組みです。サービスレジストリパターンを使用して、動的にサービスを登録・検索できます。

サービスレジストリパターン

サービスレジストリは、利用可能なサービスとその場所を管理します。サービスが起動すると、レジストリに登録されます。他のサービスは、レジストリを検索して必要なサービスを見つけます。これにより、サービスの場所が変更されても、自動的に適切なサービスを見つけることができます。

サービスディスカバリーの実装例

サービスディスカバリーの例です。サービスをレジストリに登録し、必要なサービスを検索します。

// サービスを登録
serviceRegistry.register('user-service', {
  host: 'user-service.internal',
  port: 3000,
  health: 'healthy'
});

// サービスを検索
const userService = await serviceRegistry.discover('user-service');
const response = await fetch(`http://${userService.host}:${userService.port}/api/users`);

8. 分散トレーシング

分散トレーシングは、マイクロサービス環境でリクエストが複数のサービスを通過する際の追跡を可能にします。パフォーマンスの問題を特定し、デバッグを容易にします。

マイクロサービス環境では、リクエストが複数のサービスを通過するため、トレーシングが重要です。

トレーシングの例

分散トレーシングでは、リクエストが通過するすべてのサービスを追跡します。各サービスは、リクエストIDを保持し、ログに記録します。これにより、1つのリクエストがどのサービスを通過し、どのくらいの時間がかかったかを可視化できます。

分散トレーシングの例

分散トレーシングの例です。リクエストが通過するすべてのサービスとその処理時間を追跡します。

Request ID: abc123
├─ API Gateway (10ms)
│  └─ User Service (50ms)
│     └─ Database Query (30ms)
└─ Order Service (80ms)
   ├─ Payment Service (200ms)
   └─ Inventory Service (100ms)

9. データの一貫性

マイクロサービス環境では、分散トランザクションの代わりにSagaパターンを使用してデータの一貫性を保証します。Sagaパターンは、複数のサービスにまたがる操作を一連のローカルトランザクションとして実行します。

Sagaパターン

Sagaパターンは、複数のサービスにまたがる操作を一連のローカルトランザクションとして実行します。各ステップが成功した場合、次のステップに進みます。失敗した場合、補償トランザクションを実行して、以前のステップを元に戻します。これにより、分散環境でもデータの一貫性を保証できます。

Sagaパターンの実装例

Sagaパターンの例です。複数のサービスにまたがる操作を実行し、失敗した場合は補償トランザクションを実行します。

// 注文処理のSaga
async function createOrderSaga(orderData) {
  try {
    // 1. 在庫を確保
    await inventoryService.reserve(orderData.items);
    
    // 2. 決済を処理
    await paymentService.charge(orderData.payment);
    
    // 3. 注文を作成
    const order = await orderService.create(orderData);
    
    return order;
  } catch (error) {
    // 補償トランザクション
    await inventoryService.release(orderData.items);
    await paymentService.refund(orderData.payment);
    throw error;
  }
}

10. モニタリングとロギング

マイクロサービス環境では、包括的なモニタリングとロギングが重要です。集中ロギングとヘルスチェックにより、システムの状態を把握し、問題を早期に発見できます。

集中ロギング

集中ロギングでは、すべてのサービスが同じログサービスにログを送信します。これにより、複数のサービスにまたがる問題を追跡し、システム全体の状態を把握できます。ログには、サービス名、リクエストID、タイムスタンプなどの情報を含めます。

ヘルスチェック

ヘルスチェックエンドポイントは、サービスの状態を確認するために使用されます。ロードバランサーやオーケストレーターが、このエンドポイントを定期的に呼び出して、サービスの可用性を確認します。データベースや外部依存関係の状態も確認します。

各サービスはヘルスチェックエンドポイントを提供します。

集中ロギングの実装例

集中ロギングの例です。すべてのサービスが同じログサービスにログを送信します。

// すべてのサービスが同じログサービスに送信
logger.info('Order created', {
  service: 'order-service',
  orderId: 123,
  userId: 456,
  timestamp: new Date().toISOString()
});

ヘルスチェックの実装例

ヘルスチェックエンドポイントの例です。サービスの状態を確認します。

// ヘルスチェックエンドポイント
app.get('/health', async (req, res) => {
  const health = {
    status: 'healthy',
    database: await checkDatabase(),
    cache: await checkCache(),
    dependencies: await checkDependencies()
  };
  res.json(health);
});

11. 実践的なマイクロサービス設計例

電子商取引システムを例に、マイクロサービスアーキテクチャの実践的な設計方法を説明します。各サービスが独立して動作し、APIゲートウェイを通じてクライアントと通信します。

電子商取引システム

電子商取引システムは、ユーザー管理、商品管理、注文処理、決済処理、在庫管理などのサービスで構成されます。各サービスは独立して開発・デプロイでき、必要なサービスだけをスケールできます。APIゲートウェイが、クライアントと各サービス間の通信を管理します。

電子商取引システムのアーキテクチャ

電子商取引システムのアーキテクチャ図です。APIゲートウェイが各サービスへのリクエストをルーティングします。

┌─────────────────┐
│  API Gateway    │
└────────┬────────┘
         │
    ┌────┴────┬──────────┬──────────┐
    │         │          │          │
┌───▼───┐ ┌──▼───┐ ┌───▼───┐ ┌───▼───┐
│ User  │ │Order │ │Payment│ │Product│
│Service│ │Service│ │Service│ │Service│
└───────┘ └──────┘ └───────┘ └───────┘

12. ベストプラクティス

マイクロサービスアーキテクチャを成功させるためには、適切な粒度、APIファースト、フォールトトレランス、監視とロギングなどのベストプラクティスに従うことが重要です。

マイクロサービスアーキテクチャのベストプラクティスを説明します。

  • 適切な粒度: サービスは小さすぎず大きすぎず、1つのビジネス機能を担当するように設計します。小さすぎると管理が複雑になり、大きすぎると独立した開発が困難になります。
  • APIファースト: 明確なAPI契約を定義します。APIの仕様を先に定義することで、サービス間の結合を弱め、独立した開発を可能にします。
  • フォールトトレランス: 障害に備えた設計を行います。サーキットブレーカー、リトライ、タイムアウトなどのパターンを使用して、1つのサービスの障害が全体に影響しないようにします。
  • 監視とロギング: 包括的な監視体制を構築します。各サービスのメトリクス、ログ、トレーシングを収集し、問題を早期に発見できるようにします。
  • 段階的な移行: モノリシックから段階的に移行します。一度にすべてをマイクロサービスに移行するのではなく、重要な機能から順に移行します。
  • チーム構造: サービスごとにチームを割り当てます。各チームが1つのサービスを担当することで、独立した開発とデプロイが可能になります。

まとめ

マイクロサービスアーキテクチャは、大規模なアプリケーションを小さな独立したサービスに分割する設計手法です。モノリシックアーキテクチャと比較して、スケーラビリティと柔軟性に優れていますが、複雑性も増加します。

適切なサービス境界の定義、サービス間通信の設計、データの一貫性の管理が重要です。すべてのプロジェクトにマイクロサービスが適しているわけではなく、プロジェクトの規模と要件に応じて選択することが重要です。

実践的なプロジェクトで段階的にマイクロサービスを導入し、経験を積むことで、より良いシステム設計ができるようになります。

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